2008-09シーズンからキングスの指揮を執ってきた桶谷大氏が沖縄を離れ、岩手ビッグブルズのヘッドコーチに就任しました。
キングスに在籍した4年間で優勝2回、準優勝1回、3位1回という輝かしい成績を残し、就任前に最下位だったチームを常勝軍団へと昇華させました。
自己主張の強いプロ集団をまとめあげ、選手を尊重しつつも規律を重んじる絶妙の手綱さばきで2008-09シーズンには最優秀コーチ賞も受賞しています。
桶谷さんがキングスに、そして沖縄に残した功績は数えきれませんが、その中で特に忘れられないものを3つ挙げます。
1.キングスの礎を築く
ヘッドコーチが交代しても、キングスの歴史は続きます。その歴史の中で、桶谷さんは“堅守から速攻”というキングスバスケットの礎を築きました。
思い起こせば、就任1年目の2008-09シーズンはこれでもかというほどマンツーマンディフェンスにこだわっていました。相手がどこであろうと、何をしてこようとマンツーマン。じゃんけんでずっとグーを出し続けるような頑ななまでのこだわり。
現在はゾーンやオールコート、ハーフコートのトラップと多彩なディフェンスを武器にするキングスですが、すべては1年目のマンツーマンへのこだわりが礎になっていると考えます。
根幹となる部分がしっかりしているからこそ現在の攻めのディフェンスがあり、幅を広げ、昨シーズンの優勝へとつながりました。
新ヘッドコーチの遠山さんがどのようなチーム作りをするかは分かりませんが、就任時のコメントに「キングスのこれまでの歩みを最大限に尊重しつつも、キングスの更なる飛躍の為に、自分自身のありったけの情熱と執念を燃やし…」とあるので、キングスの過去5シーズンの積み上げを活かした戦いをして下さるものと期待しています。
2.自己責任のメンタリティー
2年前、あるアウェイゲームを観に行った時にキングスは大差で負けてしまいました。勝負事なので負けたことは仕方がないのですが、審判の笛が相手寄りに鳴っている気がして、僕は試合後にそのことをぼやいてしまいました。
それを聞いた桶谷さんが、僕を諭すようにこうおっしゃいました。
「笛は流れのいいチーム寄りに鳴るものなので、今日の敗因はそういう流れを作れなかった我々(コーチ)の責任です。」
不平不満を漏らすのではなく、ましてや審判と戦うのではなく、己の中に原因を求めて改善していく姿勢に心打たれました。これはキングスの伝統として引き継いでいくべきですし、私も一ファンとして受け継いでいこうと思います。
3.沖縄バスケへの助言
桶谷さんは京都府の出身で、アメリカへの留学を経て、大分県や沖縄でコーチ業をされてきました。いろいろな土地でさまざまなスタイルのバスケットを見てきた桶谷さんに、どうしても聞きたかったことがありました。それは…
Q.沖縄の学生バスケットがもっと強くなるには、どうしたらいいですか?
桶谷さんは「沖縄の子はボールハンドリングがうまくて、相手を抜く技術に長けている」と前置きした上で、質問にこう答えました。
A.シュート力の向上。
なるほど。
ここからは自分の考えですが、内地の190cmや2メートル級の選手を擁するチームに対して、沖縄のチームの生命線は“相手をいかにして外におびき出すことができるか”。
インサイドにスペースを作り、ヘルプに行きづらくさせるために沖縄のチームはフロアを広く使うわけですが、ミドルレンジやアウトサイドのシュートが決まらないと苦しい。こうなるとインサイドを固められてしまい、ドライブもしづらくなり、合わせのパスも通りにくくなってしまいます。
シュート力が上がることで、沖縄特有の相手を出し抜く技術が今まで以上に活きてくると思います。
沖縄の学生バスケの強化が、引いてはキングスの強化につながっていきます。また、キングスをきっかけに沖縄バスケ界全体が盛り上がっていくことが、キングスの存在意義であると考えています。
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桶谷さん、長い間ありがとうございました。
たくさんのことを勉強させて頂きました。
新天地でのご活躍を楽しみにしております。
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